「全員が巣立った後に姉ちゃんがひとりぼっちで家に残ることになったら、俺達はそれこそ心配でたまらないんだ。俺達のことを考えるのもいいけど、自分のことを後回しにするのはそろそろやめてくれよ」

「あ……」

いつだって家族が一番。

……それで良いとずっと思っていた。

鈴木くんと出会って家族以外の大切なものが増えたけれど、自分に対する優先順位はあまり変わることはなかったと思う。

樹がそんな風に考えていたなんて……知らなかった。

「いいから何にも考えずに飛び込んじまえよ。鈴木ならきっと姉ちゃんを幸せにしてくれるからさ」

姉弟の中でも一番歳の近い、樹。

反抗期だってあったのに、今では一緒に協力して家事と育児に勤しんでくれる。

大切なものが増えれば増えるほど、次第に何が正しいか分からなくなっていって、自分で自分の首を絞めていた。

けれど私には道を間違えそうになればお前は間違っていると叱ってくれる人達がいる。

……本当に幸せものだ。

私は6人全員を心から愛しているし、同じように皆からも愛されている。

「泣くなよなー。姉貴のくせに」

「樹が泣かせたんでしょうっ……!?」

「ったく。世話が焼けるな、姉ちゃんは」

泣かせた張本人である弟に慰められ、私は自分がいかに恵まれているかを改めて実感したのだった。