(鈴木くんはずっと待っていてくれたんだわ……)

初めて話した時のことを覚えているかと問いかけられた時、私は答えてあげることができなかった。

ずっと気になってはいたのだけれど、思い出すのが遅くなってしまって本当に申し訳ないことをしてしまった。

(ごめんね……)

謝罪の意味を込めて抱きしめ返すと、頬にあたるジャケットが湿っているのを発見してしまう。

一度気になりだすと甘ったるい雰囲気を保つのが急に難しくなってくる。

ああ!!こんな時にまで騒ぎだしてしまう主婦魂が恨めしい!!

「着替えた方がいいわよね。待ってて?今、樹のTシャツを持ってくるから……」

お高そうなジャケットがシミになってしまってはいけないと、着替えを取りに行こうとするが、鈴木くんはなかなか離してくれそうもない。

「……佐藤さん」

そう言って絡めた左手がそのまま鈴木くんの口元に行き、ちゅっと薬指に口づけられる。

何度も何度も口づけるものだから、ただならぬ気配を感じて怖くなる。

「あ……の……」

「俺と、結婚してください」

それは……この日一番の超ド級のサプライズだった。