「これ?」

そう言って水槽に顔を近づけてくる鈴木くんの横顔に、私は急にドキリとさせられた。

水槽の照明に照らされる横顔の美しさは、展示の主役である金魚にだって負けていない。

私がおめかししたのと同様に、普段の野暮ったい恰好とは打って変わって今日の鈴木くんはオシャレだ。

さすがにいちいち驚かなくなったけれど、慣れないものは慣れない。

ねえ……?

鈴木くんを見て何人かの女性が振り返っていることに気が付いているの?

「こっちのやつは佐藤さんに似てるよ」

他の人とぶつからないようにさりげなく肩を引き寄せてくれるこの優しい人が、私の恋人なのだと思うと首の後ろがそわそわしてたまらなくなる。

「次はどこを見ようか?」

絡めた指先に力をこめると、同じ強さで握り返してくれる。

自分が確かに愛されていることを実感すると、世界中の人に幸せですって自慢したい気分になる。