目的のアクアリウム展の会場は待ち合わせをした最寄り駅から電車を乗り継いで40分ほどの距離にある。

駅から更に歩いて美術館や博物館が密集する地域に到着すると、会場には既に順番待ちによる人だかりが出来ていて、チケットを買って入場するまで更に15分もかかってしまった。

「うわあ……素敵……」

「佐藤さん、絶対好きだと思ったんだ~」

長く待った分だけその感動もひとしおというもの。私は会場に入るなり、感嘆のため息をついた。

薄暗いフロアの中にはライトアップされたいくつもの水槽があって、その中で金魚が尾ひれをたなびかせている。

(かっわいい……!!)

辛抱たまらずふらふらと水槽に近寄ろうとする私を鈴木くんが横から制した。

「暗いから注意してね」

アクアリウム展に行く道中、慣れないピンヒールのせいで時折バランスを崩してふらついていることを鈴木くんはとうに見抜いていたのだった。

「うん、ありがとう……」

夢中になるあまり足元がお留守にならないようにと差し出された手のひらの上に、自分の手をそっと重ねる。

転ばないように手を繋ぐなんて、これでは恋人というよりは子供みたい?