「なんかさあ……姉さんに気を遣った結果、実は一番良い思いをしたのは鈴木よね……。おいしいところを全部持っていかれた!!っていうか……」

餃子の皮にひだを作りながら、早苗が確信めいたことを言い放つ。

「同感」

櫂が即座に同意すると、姉弟は手元そのままに目線を合わせ互いにうんうんと頷きあった。

「どうかん!!どうかん!!」

ふざけたひろむが櫂の口真似をしながら囃し立てるようにぱんぱんと手を叩くと、皮についていた小麦粉がぶわっとあたりにまき散らされた。

(あーあ……)

俺はひろむの頬についた小麦粉を台拭きでふき取りながら言った。

「それについては、櫂だって賛成しただろ?」

「ただ家事を休んでのんびりするなら、母の日とさほど変わらないんじゃないかって言っただけだから」

素直じゃない奴……。

こんな憎まれ口を叩いてはいるが、鈴木のことを毛嫌いしているわけではない。

自分より鈴木の方が男として格上だと自覚している分、素直に負けを認められないんだな。この青二才め。