「前に週刊誌にネタを売ったって話したじゃん?あの人、カツラを政治資金で買ってたんだよ。それが世間に知られて大騒ぎ。もちろんカツラのことも含めて」

「……鈴木くん、それは酷いよ」

本人にしてみれば絶対に知られたくないであろう秘密を、大々的に披露されてしまったわけだ。

全国民から、あの人カツラなのねと憐れみのこもった眼差しで見守られているならば、それはとても辛いことであろう。

鈴木氏を気の毒に思っていると、勘違いした鈴木くんがよしよしと私の頭を撫でた。

「大丈夫、俺はハゲないよ。頭皮のケアは万全だから」

……ハゲたら鈴木氏の気持ちも分かるのでは?

「ワカメでしょ、昆布でしょ。それから、マッサージに……」

ハゲ対策を指折り数える姿があまりにも必死だったので、私はその言葉を胸にそっとしまっておいたのだった。