「おい、櫂。誤解を招く言い方すんなよ……」

「わざわざお膳立てしてやるんだからこれぐらいの嫌味に耐えるくらい当然でしょ」

櫂くんはふんっと鼻息荒くそう言うと、テレビのチャンネルをサッカー中継に合わせてソファに寝転がるのだった。

「っということで……。鈴木には当日俺達が準備している間に姉ちゃんを外に連れ出してもらうことになってるから。よろしくな?」

ガシッと肩を組み、背中をポンポンと叩かれた時の頼もしさといったら言葉で言い表せない。

……俺、樹くんに一生ついていきます!!

「いいの!?」

ふたりで出かけるということは、これは立派な誕生日デートではないか。

毎度のことながら佐藤家の事情を考慮した場合、普通の恋人同士のようにふたりきりでお祝いをするというわけにはいかない。

佐藤さんが好きそうなものは、デートスポットからスイーツまで既にリサーチ済みだったが、さすがにデートは無理だよなあっと諦めていたところに朗報である。

「いいか?その代わり、くれぐれもお前ん家にだけは連れて帰るんじゃねーぞ?」

「わ、わかってるよ……」

……さすが、樹くん。

ムクムクと湧いてきた下心に釘を刺すのもキチンと忘れない……完璧な飴と鞭である。

デートプランの事前チェックを義務づけられてしまったわけだが、やはりふたりきりの外出は心躍る。

(喜んでくれるかな……)

こうして、本番に向けてそれぞれ着々と準備を進めるのであった。