「……急にデレるなよ」

え?と髪を耳にかけて首を傾げて聞き直すと、佐伯が低い掠れ声で呻いた。

「こっちの余裕がなくなるだろうが」

慰めるというよりは、たがが外れた獣のように乱暴にワンピースの裾をめくりあげ始める。

持ち前のサービス精神をいかんなく発揮する男だった佐伯が、切羽詰まったようにキスとそれ以上の行為を自らせがんでいるのだ。

いつも飄々としていて、誰よりも自由で、それが妙に腹立たしくて突っかかったのは一度や二度のことではない。

どうにか出来る相手じゃないと半ば諦めるようにして、距離を取った時期もあった。

(きっと、こういう顔が見たかったんだろうなあ……)

誰も見たことがないであろう余裕のない佐伯に応えるように、背中のファスナーが開けやすいように髪を持ち上げる。

「脱がして?」

もう、一方的に何かを与えてもらうだけでは物足りない。

ただ、慰められるだけでは満足できない。

……なんだか私、欲張りになってしまったみたい。

溺れるほどキスを繰り返して、心も身体も丸裸にされて、夢か現か確かめるように指を絡ませ互いの手を握り合う。

「わ……たる……」

感極まって途中で名前を呼んだらよほど気に入ったのか、渉は嬉々として胸元のキスマークの数を増やしていく。

「いいな、それ。興奮する」