「あ……れ……」

地面が濡れて色が変わったのを見て、最初は雨が降ったのかと思った。

ポタポタと頬を掠めていったものが無意識のうちに流れた涙だと、自覚するころにはもう手遅れだった。

「見、ないで……!!」

佐伯から見えないように、咄嗟に手で顔を隠す。

直ぐにいつもの私に戻るから、ちょっとだけ待っていて欲しい。

最後ぐらいは笑って見送ろうって決めていたのに、今頃になって涙が溢れてくるなんてあんまりじゃないか!!

しかし、そんな必死の抵抗も虚しく佐伯は邪魔とばかりに私の手をひっぺがすと、こつんと額同士をくっつけてきた。

「俺がいないと寂しいか?」

そんなわけないでしょ!?と反射的に言いかけて、やっぱりやめた。

どんなに憎まれ口を叩いたって、私の心の大部分は最後に佐伯と一緒に居られて嬉しがっている。

「……そうよ!!寂しいわよ……!!それのどこが悪いのよ!?」

一度緩んだ涙腺はそう容易く元には戻せない。

我慢していた反動なのか、次から次へとポロポロと本音がこぼれていく。

「だって……仕方ないじゃない……!!好き、なんだもん……!!」

ああ、とうとう言ってしまった。

突き通せない意地はもはや意地でも何でもない。