「送別会、抜けてきて大丈夫なの……?」

「そのために鈴木を幹事にしたんだろ?あとは適当に上手くやるんじゃねーの。なにせ鈴木は俺に返しきれない恩があるからな」

返しきれない恩がどういう類の恩なのかは押して図るべし。

後始末を押し付けられて可哀そうに……。

だから、鈴木くんってばちょっと嫌そうな顔をしていたのね……。

「そういうセリフは普通、鈴木くんが言うものでしょう……」

「そうか?」

佐伯のとぼけ顔があまりによく出来ていたものだから、ふふと笑いが止まらなくなる。

……ああ。

何もなかったみたいに私達、普通に話している。

まるで、明日から佐伯が九州に行くなんて何かの間違いのようだ。

こうして他愛のない会話をいつまでも続けられたらいいのに。

明日も明後日も、そのずっと先も、くだらない冗談で笑っていられたらよかった。

でも、私達は大人だから夢は夢として現実と向き合うしかない。

今夜が終われば、もう逢うこともないかもしれない。

今夜が、終われば……。