「お前は性懲りもなく!!あんな顔で男を誘ってんじゃねーよ!!」

「痛っ!!」

佐伯の特大級のデコピンは見事、油断していた額にクリーンヒットしたのだった。

(な、なにすんのよ!!)

あまりの痛さに甘く切ない雰囲気も全て吹っ飛んだ。涙目になって額を擦りながら、佐伯に猛反論する。

「あんな顔ってどんな顔よ!!」

「“誰でも良いから慰めて”って顔に決まってんだろ?」

「誰でもいいなんて思ってないわよ!!」

それではまるで、やたらめったら色仕掛けをする魔性の女のようではないか。

言いがかりにもほどがあると腹を立てるが、佐伯は決して納得しようとはしない。

「嘘つけ……俺に抱かれた日も完全にヤケになってたくせに」

例の夜のことを持ち出されると、途端にぐうの音も出なくなる。

いつもは私が怒る側なのに、今日はなぜか怒られているなんておかしな話だ。

「渡辺は昔からしっかりしているようでしっかりしていないからな。お前が変な男にホイホイついていくんじゃないかって俺はマジで心配だよ。これからは逐一見守ってるわけにはいかないんだからな」

(見守るって……)

佐伯がナイトのように慎ましく私の身を案じていてくれていたこと……知らなかった。