「寂しい?」

明智さんに尋ねられて、ドキリとした。それは間違いなく私の本音だったからだ。

「さっきから佐伯のことばっかり見ているからさ。渡辺さんって佐伯と仲良さそうだったもんね」

……そうよ。

私は寂しいのよ。寂しくて寂しくて、たまらない。

どんなに強がりを言っていたって、突き詰めれば寂しいという感情に到達してしまう。

(だって仕方ないじゃない。私は……あいつのことが……)

お酒も入っていることもあってか、うるうると瞳が潤んでいく。

そんな隙だらけの私の肩を引き寄せるのは、赤子の手をひねるように簡単だっただろう。

「……よかったら、今度から俺とも仲良くしようよ」

自分のことでいっぱいいっぱいになっていたせいか、私は明智さんが徐々に距離を詰めていたことに気づかなかったのである。

(仲良くって……)

眼鏡の奥の瞳が怪しく閃いているのが見えて、急激に涙が引っ込んだ。

ほのかな下心を含んだ口説き文句は、ちょっとした脳内パニックを引き起こした。

「え、あ……。ごめんなさい……。私、ちょっとトイレに……」

しどろもどろになって言い訳をして、そそくさとトイレに逃げ込む。