「大丈夫、大丈夫。まだ始まったばかりだから」

鈴木くんは席を立ったついでとばかりに、近くを歩いていた店員に酒の追加をお願いしていた。

「鈴木くんが幹事なのね」

「こういうのは渉の方が向いてるんだけどね。まあ、今日ばっかりは」

“本当は幹事なんてやりたくなかった”と顔に書いてあるのは私の気のせいではないみたい。

「佐藤さんはやっぱり来れないって?」

「双子の弟さんが風邪引いて寝込んでるって話だし、やっぱり放っておけないって」

「ああ。昨日、かなりダイナミックな格好で寝ていたから」

亜由から預かっていた会費と自分の会費を鈴木君に渡すと、久しぶりに集合した同期との会話もそこそこに佐伯との距離が一番遠い端の席に腰かけた。

ネクタイは最悪、鈴木くんに渡してもらおうことにしよう。