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佐伯の送別会はいつぞやの情報交換会でも使用した和食ダイニングのお店で行われるそうで、よりにもよってなぜこの店なのかと幹事のチョイスを恨みたくなる。

私がお店に着いたころには結構な人数が集まっていて、主役である佐伯はその中心にいた。

同期だけの気楽な集まりを想定していたのに、蓋を開けてみれば同期だけではなく噂を聞きつけた他部署の人間まで、随分と賑やかな送別会になっているようだ。

(どうしよう……)

ちょっとくらい話ができるかもしれないと思っていたのが、甘かったようだ。

これでは二人きりになるチャンスどころか、まともに会話することも難しい。

「渡辺さ~ん」

どうしたものかと端の方から様子を伺っていると、鈴木くんが近づいてきてくれたので助かった。

「遅くなってごめんね。定時間際に上司に呼ばれちゃって」

……絶妙に空気を読めないのが、わが総務部部長の欠点である。