「慰めてやろうか?」

渡辺をひとりにしておけなくて、何とはなしに出たセリフだった。

「俺の得意分野」

ヘラリと笑ったのはあいつに罪悪感を与えないためである。

「カラオケから愚痴聞きまで、なんでもござれ」

求められれば大体の要求には応えてやれると思う。伊達に遊び人の称号を得ているわけではないのだ。

「それともホテルがいいか?」

そう言うと、渡辺は驚きで目を見開き、次の瞬間顔を真っ赤にした。

これぐらいの冗談をあっさりと受け流すことができないのは、あいつに心の余裕がないせいか。

「っつーか、寒いからさっさと移動しようぜ」

込み入った話をするには繁華街道のど真ん中というのはどうにも適していない。

どこか静かなところはないものかと、辺りに視線を巡らせていると、ポスンと胸に何かが飛び込んでくる。

「渡辺……?」

「本当に……慰めてくれるの……?」

予想外の手ごたえに、ゴクンと生唾を飲み込んだ。

渡辺が俺の誘いに乗った理由はなんとなくわかる。

……相手は誰でも良かったのだ。

男とはこういう生き物なのだと、隙を見せればたやすく女を征服していく最低な生き物だと、身を持って証明することで壊れかけた心を守ろうとしていたのだ。

ぶっちゃけ、それでよかった。

他の男にかっさらわれるくらいなら、最低男で結構だ。