(くっそう……)

突っ込み不在の中でボケるのもそろそろ虚しくなってきて、適度なところで姿勢を正し本日の業務に取り掛かる。

新人研修から数か月が経ち、ようやく配属先の営業部にも慣れたところだ。

一緒に配属された相方である鈴木との相性はまあまあ。

新人研修の際に経歴や容姿が“色々と”噂になっていた鈴木と初めて対面した時は、規格外の高スペックにたじろいだものだが、慣れてくればどうってことない。

「鈴木は彼女を作らない主義なのか?」

「……興味ない」

興味がないとは、これいかほどに。

イケメンに似つかわしくない、穏やかではない発言である。

「上手くいかなかったらゲームみたいに簡単にリセットとはいかないからな……」

ナチュラルボーンイケメンのくせに、鈴木はどこか達観している奴だった。

イケメンに生まれた人生を素直に謳歌すれば良いのに、物事を複雑に考え過ぎなきらいがある。

あれだな。

……こういう奴ほど、本命ができた途端に尋常じゃないほどにハマってしまうものなんだ。