「うわ……。どうしたんだ?その頬……」

「殴られた」

出社するなり頬にできた痛々しい痣を鈴木に指摘され、昨夜の事の顛末を説明する。

合コンで知り合った女の子と食事に行き、かなーり良い雰囲気になったところで、本命の彼氏がご登場し、間男のレッテルを張られて一方的に殴られたのだ。

(俺も被害者だっつーの!!)

“彼氏がいなくて寂しい”なんて発言はもう金輪際信じてなるものか。

「トンダ災難に巻き込まれたモンダナアー」

「……頼むからもう少し同情してくれよ!!」

絵に描いたような綺麗な棒読みが、傷口に塩を塗り込んでいくようである。

鈴木は机に突っ伏しておいおいと泣き真似を始めた俺をあっさり無視すると、営業先に持っていくレジュメ作りを再開したのだった。