俺は気を取り直すように、コホンと小さく咳ばらいをして佐藤に尋ねた。

「それで?佐藤はこの後どうする?」

「ごめんね、佐伯くん。私も家で弟達が待っているの」

……7人姉弟の長女の佐藤は、“家族”という鉄壁の防御を常に装備している。

「ちぇー」

ここまで女性陣に袖にされると昔からモテていたのは、ちょっとした勘違いなのかとも思える。

佐藤は申し訳なさそうに会釈をして、改札を通り抜けて行った。

(さて……)

佐藤にもあっさり振られてしまったので、俺は仕方なく登録されている連絡先一覧から今夜の夕食の相手を探すことにしたのだった。

それから、ほどなくして研修の締めくくりであるグループ発表を終えると、俺達3人は揃って同じ支社に配属になったのである。