「へえ……。あいつ、彼氏なんかいたんだな……」

動揺を悟られないように、しきりに感心した振りをする。

一緒の研修グループになってから早2カ月。

あいつに粉をかけようとした男達が、ことごとく玉砕していった理由がようやく分かった。

「大学の先輩なんだって~。付き合いだしてから、結構長いみたいだよ?」

「へえ……」

ガミガミと小煩い渡辺だが、彼氏の前でもあの調子なんだろうか。

あいつが男に甘えているところなんて全然想像できなくて、逆に笑える。

「佐伯くん的にはちょっと残念?」

聞いてもいないのに情報を与えようとしているのはわざとなのか?

事実をありのまま伝える佐藤の行為は、悪意とも好意とも言えないが俺はちょっとむっとしてしまった。

「別にー?渡辺に彼氏がいることが意外だっただけだよ」

……これではなんだか俺があいつに振られたみたいじゃないか。

昔から何でも要領良くできる方だった。

勉強も、スポーツも、人間関係も。

他の奴らほど躍起にならなくても、それなりの努力でそれなりの結果を出すことができた。

女性関係などその最たるもので、振り向かせる努力をせずとも相手から好意を抱かれることの方が多かった。

彼氏がいる女性にわざわざ手を出すまでもない。別の相手を探せば良いだけの話だ。

……女性はこの世にごまんといるのだ。