眠気に頭を支配されている俺とは対照的に渡辺は今日も絶好調だった。

研修開始当初は俄然やる気が出ていたはずの俺だったわけだが、あの時隣に座った美女が幻想だということはすぐに分かった。

渡辺椿というのは口うるさい委員長タイプで、隙あらば手を抜こうとする俺を何かにつけて構いたがるお節介やきの面倒な女だということだ。

その上、見た目と反するように気が強く、人に頼られると嫌とは言えない姉御肌というおまけつき。

通常、この気の強さは同じ女性陣から反感を持たれそうなものだが、面倒事も進んで引き受けるきっぷの良さと、頭の回転の速さは誰もが認めるところなのか、あいつが皆の輪から外される気配はない。

むしろ、お近づきになりたいと思っている男の方が未だに多い。

(まったく……気楽なもんだぜ……)

毎日小言を言われている俺の身にもなってみやがれ。