「何……言ってんのよ……?」

終わりにするしかないじゃない。

だって、もう佐伯はここからいなくなるんだから。

何かを望んだってもう全部手遅れだ。

「……終わるもなにも、私達何も始まっていなかったじゃない!!」

私は佐伯にそう言い捨てると雨が降りしきる中、駅まで走ったのだった。

“行かないで”も。

“待ってる”も。

……どちらも私には言う資格がなかった。

もう少しだけ勇気を出していれば、私とあいつの奇妙な関係も変わっていたかもしれない。

曖昧な関係の終わりを決めなかったのは、臆病者のくせにプライドだけはいっちょ前で、傷つきたくないからと理由をつけて佐伯の好意に胡坐をかいていた私自身なのだ。

「今更……っ」

“傍にいて”なんて……。

「言えっない……よっ……」

……誰にも言えない心の叫びは、雨音と一緒に街の中へと消えていったのだった。