エレベーターの中でひとしきり自己嫌悪に浸って、8階の総務部のフロアに降り立つと、エレベーターホールには台車を持った亜由の姿があった。

「亜由!!」

「ひとりで大変だったでしょ?」

「助かった~!!」

私は天の助けとばかりにダンボールを台車に置いた。もう二度とダンボールはひとりで運びませんと心に誓い、軽くなった肩と腕をもみほぐす。

「お礼なら佐伯くんに言ってね。椿が大変そうだからって、わざわざ総務部に寄ってくれたんだよ?」

私に代わって台車を押す亜由が、含みがあるのではないかと疑いたくなるほどニコニコと良い笑顔を向けてきた。

「……佐伯が?」

意地になって手伝いを拒んだ私とは大違いの、行き届いた配慮である。

(そこういうところが困るのよ……)

引くでもなく、押すでもなく。

適度な距離を保ちつつ、私の気持ちを試すような餌を撒いてくる。

(だからいつまで経っても、突き放せないのよ……)

それがまたあいつの思い通りになっているようで何だか癪である。