……そんなに恨みを買われていたのだろうか。

後腐れのないように言葉を選んで丁寧に断ったつもりだったのに。

数年前の自分の態度に落ち度はない、と思う。

「ん……う……」

「起きちゃった?ごめんね?」

身動ぎをしたひろむを背負い直して額に手を当てる。

(早く寝かしてあげないと……)

「すみません。弟の具合が悪いのでこれで失礼しますね」

そう言って会釈をすると、町内会長の奥様は初めて私がひろむを背負っていることに気がついたようだ。

横切ろうとした私に最後に浴びせたのは、侮蔑のこもった眼差しとチクチクと棘のある台詞だった。

「本当にご両親からどんな教育を受けたのかしら。留守を任せている間に妙な男を自宅に招き入れているなんて」

早くこの場から退散しようと踏み出していた足がピタリと止まった。

……両親への侮辱。

それだけは聞き流すわけにはいかなかった。

「お言葉ですけど……!!」

声を荒らげて反論しようとした、その時だった。