(鈴木くんって、うちの家族のことが大好きなのね)

思わぬところで嬉しい発見をして顔が綻んでしまいそうになるが、とっさに表情を引き締めた。

鈴木くんがうちの家族を好きであるほど、拒絶の意を伝えなければならないことが心苦しくなる。

「まだ……ダメよ」

「本当に反省してるよ……?」

鈴木くんは捨てられた子犬のような濡れた瞳をして上目遣いで私の弱点をついてきた。

そんな目で見つめられたら、私のほうが悪者みたいではないか。

キラキラオーラに当てられ、ついほだされそうになるのを寸でのところでこらえる。

……鈴木くんに本当のことは言えない。

「どうしてもダメなの!!」

私は気まずくなって鈴木くんから目を逸らしてしまった。それが良くなかったのかもしれない。

「……なんかさあ。佐藤さん、俺に隠してない?」

頑なな態度に何かあると踏んだ鈴木くんは、訝しむように見目麗しい顔を私の眼前に突き出した。

察しの良い鈴木くんに気取られてしまっては、誤魔化すのは容易いことではない。