「姉さんに振られないといいな?」

声変わり前の櫂くんの声真似はアクセントといい言葉のチョイスといい佐藤さんにそっくりだった。

「ワラエナイヨ、カイクン……」

一瞬、本当に佐藤さんに言われたのかと勘違いしてしまったではないか。動揺のあまりカタコトになってしまう。

もし、魂が目に見えるとしたら口から抜け出ていたに違いない。

「姉さん見た目は地味だけど、近所のオバサン連中からは評判が良いんだ。実際、しつこくお見合いを勧められたこともあるくらいだしね」

コントローラーをテーブルに置くと風呂敷包みをぶんどって、俺の顔を厳しい表情で見上げた。

「ボヤボヤしてんなよ」

「はい……」

年下の櫂くんにお説教された俺は口から抜け出た魂を回収すると、明日こそはお許しがもらえるように謝り倒そうと心に決めるのだった。