「ご馳走様でした」

佐藤家特製野菜炒めを平らげ、感謝の念をこめて手を合わせる。

佐藤さんの怒りが早く収まりますようにと、自分勝手な願いも付け足してみる。

まあ今回は完全に俺が悪いんだけどさ……。

佐藤さんの言いつけを守らず勝手に物を買い与える行為は、教育上よろしくない。

両親が不在の家だと揶揄されないように佐藤家は日頃から子供達の躾や情操教育には気を遣っているのだ。

それを台無しにしてしまったせめてもの罪滅ぼしにと、油汚れを残さぬよう夕飯が入っていたタッパーを隅々まで綺麗に洗う。

(よし、完璧)

某食器洗剤のCMのようにキュッキュッと指で擦って音が鳴ることを確認し水滴を拭きとって、元通りに包み直す。

「櫂くん、お待たせ。今日もご馳走様でした」

夕飯を食べ終わるのを律儀に待っていた櫂くんに風呂敷包み返そうとするが、一向にこちらを振り返る気配はない。

櫂くんは画面に映し出された物騒なセリフと共に火炎を口から噴き出す敵に向かって必殺技を繰り出しながら言った。