「なんで俺ばっかりこんな役回りなんだよ……」

日課となっている夕食後のランニングの最中と思わしきジャージ姿で玄関にたたずんでいるとどこからともなく悲壮感が滲み出てくる。

「折角だから上がっていきなよ。お茶くらいは出すからさ」

「当たり前だろ」

櫂くんは靴を脱ぐと遠慮とは程遠い態度で、ずけずけと音を立てながら廊下を歩き出した。

まだほのかに温かい風呂敷包みを小さく揺らしながら後ろに続く。

(今日の夕飯は何だろうな)

昨日はお肉、その前は焼き魚だった。となると、今日は野菜かな?

櫂くんがランニングのついでに佐藤家の夕飯をデリバリーしてくれるようになったのは、出禁を言い渡された次の日のことだ。

(やっさしいんだもんなー。佐藤さんは)

夕飯のデリバリーが佐藤さんの指示のもと行われているのは言うまでもない。

愛情の印とも言うべきお裾分けの夕飯に頬ずりをする。

いや、ホント。

佐藤家に通う内にコンビニ弁当では満足できなくなってしまった俺としては非常にありがたいです。