次の日が休みの週末、または祝前日。

終電が終わって店内に残っている客もまばらになった頃、そいつは決まってふらっとやってくる。

「やあ、樹くん。今日も頑張って働いているかい?」

「鈴木……」

鈴木は俺が案内せずとも勝手に空いているカウンター席に座り、ジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩め始めた。

「ウイスキー水割りと適当に食事持ってきてもらえるかな?お腹減いてるんだ」

「はい。わかりました」

鈴木は注文を告げると不機嫌そのものといった様子でカウンターに肘をついて、ボンヤリと携帯をいじりだした。

接待という名目で終電が終わるまで重役や取引先の相手に付き合わされたらそりゃ不機嫌にもなるだろう。連れていかれる店が姉ちゃんには言えない類の店であればなおさらだ。

他人のお金で綺麗なお姉様を侍らせるなんて羨ましいが、どうやら鈴木には当てはまらないらしい。見た目だけはイイ男、口を開けばゲームオタクの鈴木に、適当にあしらわれる美の最先端を行くお姉様方には同情を禁じ得ない。

……こいつ、なんたって姉ちゃんにぞっこんだからな。

今だって携帯を覗きこみながら、デレデレに緩んだ顔を隠そうともしない。メールの相手は十中八九、姉ちゃんなのだろう。

(くっそう……ラブラブかよ……)

……俺も彼女欲しいぜ。畜生め。