「美味いか?」

「まあね……」

雑誌での評判通りメインの肉・魚ともに申し分のない味だった。

(美味しいけど、美味しいけど……!!)

問題は目の前にいるこの男だ。何を考えているのかさっぱり分からない。

洗練されたテーブルマナー、相手の興味を引くような会話の選び方に、おちゃらけた男だとばかり思っていた佐伯のことを見直してしまったのは確かだけれど。

甘さ控え目のさっぱりとしたデザートを口に運びながら思うことはただひとつ。

……他の女の人ともこういう所で食事するんでしょう?

「どうした?」

「何でもない。お腹がいっぱいになっただけよ」

すっかり手が止まった私の顔色を窺う佐伯の視線から逃れるように顔を伏せ、ナプキンで口元を拭く。

私は……最悪なことに気づいてしまった。

(これじゃ拗ねているだけじゃない……)