ーー……放課後になって、あたしはいつものように葵と体育館に来ていた。
体育館の2階から手すりにもたりかかりながら、バスケ部の練習を眺める。
お目当てはもちろんーー成宮くん!
目尻の下がった優しい目元は短髪ということもあってか、どこか幼い印象を与える。
でもそれは単に見た印象のことで、こうやって練習を見ていると誰よりも大人びて見える。
よく周りを見ていて、バスケ部キャプテンの役割をしっかり果たしている。
「かっこいい…」
思わずぽろりとあたしの心の声が漏れる。
「マネージャーだったらもっと簡単に近くで見れるのに」
「そんな不純な動機で入れないよ〜」
「琉妃のそういう真面目なとこいいと思うよ」
「まあそれにマネージャーだったらずっと成宮くんばっかり見てるなんてできないしね」
ちらりとあたしと同じようにバスケ部を見ている女の子の集団を見る。
きゃーと黄色い歓声を上げている彼女たちのお目当ては成宮くんーーではなく、あたしのファーストキスをいとも簡単に奪ってくれちゃった宮野。
そういえば宮野もバスケ部なんだよねーー。
その高い背をいかしてセンターのポジションにいる。
ゴール下で根強くプレイする姿はかっこよく思えなくもない。
(いやいやいやーー)
ぶんぶんと頭を振り、チームの司令塔であるガードとして頑張る成宮くんに視線を移す。
誰よりも声を出す頼もしい成宮くんを見ていると知らずに笑顔になれる。
キュッキュッとなるバッシュが響く体育館で放課後を過ごすようになって1年半が経とうとしていた。
