松田 陽汰side

まさか、あいつが浮気してるところを目撃するとは思わなかった。

ショックを受けたのか俺はなぜか逃げた。

違う、ショックは受けてない。

たぶん矢城がアレをみたら余計な心配するからわからせないように逃げた。

でも、矢城にバレてた。こういうことは鋭いんだよな。

案の定。矢城は余計な心配をしていた。

俺はデタラメを言って心配させまいと言い訳をした。

鋭い割りには純粋な矢城。少し困ったような顔をしてから優しく笑った。

そう、俺は矢城のことか好き。俺は矢城の笑う顔が好きだった。

幼稚園の頃だったけか?




その日は台風が押し寄せていて早帰りになった。

雷がものスゴい鳴っていたのを覚えている。

俺の親は共働きで他の子は親と帰っていくが俺のうちはなかなか来ない。

そのときにいたのが矢城。ホールに集まっているときに矢城をたまたま見つ

けた。

今じゃ照れくさくて矢城。まっちゃん。なんて苗字で呼んでいるが前は名前

で呼び合っていた。

『つきはちゃん』

俺が最初に矢城を呼んだ。

ずっと不安げな顔をしていた矢城は少し明るくなった。

『つきはちゃんのおかあさんはまだこないの?』

すると矢城は寂しそうに笑って言った。

『つきはのおかあさんはこないの。とおくにいるおばちゃんがきてくれるん

だって。』

『そうなんだ!はやくきてくれるといいね!』

俺は満面の笑みで言った。

『うん!ひなたくんのおかあさんもはやくくるといいね!』

そしたら矢城も笑ってそう言ってくれた。

そのときから俺は矢城のことがすきになった。

クラスが違う俺と矢城。

矢城を好きになってから幼稚園に行くのが楽しみで仕方なかった。

朝も早く来て、休み時間も矢城のクラスに入りたびっていた。

小学校に上がっても俺と矢城は仲が良かった。

もちろん同じクラスにはなれていない。

でもちょくちょく矢城の方から一緒に帰ろうと声をかけてくれていた。

矢城とパッタリ話さなくなったのは小5のとき。

お互い異性だということを意識して話しかけにくくなっていた。

それがなんだか寂しく思った俺は矢城のクラスの男子と話すフリをしてをし

て毎日のように矢城のクラスに通っていた。

今思えば俺ってストーカーか?(笑)

中学に入っても俺と矢城は同じクラスにはなれなかった。

あるとき噂を聞いた。

"月葉と直登が付き合ってる"

確かに直登と矢城はすげー仲良かった。

直登も矢城のことを月葉と呼んでいた。

俺のほうが先に好きになったっつーのに横取りしやがって。

そんな風に思っていた。

でも幸せになってほしいと言う自分もいた。


そして高校。

やっと同じクラスになれた。

クラスに入るなり目に飛び込んできたのは矢城。

涼しそうな顔をして窓の外を眺めていた。

あぁ、同じクラスになれたんだ。

でも俺には彼女がいる。

中学を卒業するときに学年でそこそこモテているやつからコクられた。

笑う顔が少しだけ少しだけ矢城に似てて了承した。

が、実際のとこ似てない。我儘で自分勝手。

別れて少し解放感が得られたっていうことは秘密な。(笑)

矢城が俺のこと恋愛対象として眼中にないのは知ってる。

それでもいい。一生俺のこと好きにならなくてもいい。

矢城のこと一番理解しているやつになれればそれでいい。