今日の天気は曇り。

今にも雨が降りそうな灰色の雲。

少し肌寒い朝。

いつもより早い時間に家を出た。

那奈はもう友達ができたようでちがう友達と行くことになったらしい。

まあ、一人には慣れてるから寂しくは感じられなかった。

耳にイヤホンを付けて好きなアーティストの新曲を聴きながら歩いていた。


~前を向きなよ、下を向いていたら次に進むことはできない~


そんな歌詞が私の心に響いた。

あぁ、私こんなに涙腺弱かったっけ?また涙か出てきちゃった。

「あははっ.....」

笑っちゃうなぁ、こんなに弱かったんだね。

呆れちゃう。

一人でいることは平気なのに、こういうことになるといつも弱腰。

ほんと、嫌になっちゃうよ...。

気がつけば校門の前に着いていた。

「ふぅ....」

一呼吸してから校門を潜った。

野球部は朝から走り込みをしていた。

遠くと方で勇ましい掛け声が聞こえてくる。

「あれ?矢城?」

「まっちゃん!そっか野球部に入ったんか!」

そこには水道で顔を洗っていたとみられるまっちゃんが立っていた。

「あぁ、まだ仮入部だけどな」

「へー、すごいね!頑張って!」

「おう!矢城もな」

まっちゃんは優しく笑ってそう言った。

「うん、ありがとね」

私も柔らかく笑って見せた。


まっちゃんと別れ下駄箱に靴をいれていると、

「月葉ぁぁぁぁぁぁあ!」

ドンっと後ろから衝撃が走った。

「さ、桜!?」

えへへと可愛らしく微笑む桜がいた。

「おはよっ」

走ってきたのか少々息が乱れていて、髪が少しはねていた。

教室に着くなり私は桜の髪の毛をいじっていた。

「もう、女の子なんだから身だしなみには気を付けなよー?」

「はぁーい」

ミディアムショートの髪の毛を上手く結っておまけにリボンの髪飾りをつけ

た。

「ん?なにこれ??」

「昨日のアメのお礼。リボンの髪飾り!

あんまり大きくないし、シンプルなデザインだから桜に似合ってるよ!」

「そんな、アメごときで髪飾りなんて...!」

「いいのいいの!どうせ私付けないし、桜なら大事に使ってくれそうだからさ!」

「あ、ありがとっ!」

幸せそうに笑った桜を見てると私も自然と頬が緩む。

この子とずっと一緒にいたい。

そう思える友達ができたのはいつ以来だろうか

「なんか月葉幸せそう!好きな人でもできた?」

私はイタズラっぽく無邪気に聞いてきた桜の頭を撫でながら言った。

「桜と友達になれて嬉しいなって思って♪」

そしたら桜、恥ずかしそうに笑って私もだよって!

もう、桜と付き合いたいくらいだよ(笑)

「おーっす!」

ガラガラッと教室のドアが大きな音を立てた

「おー!陽汰きたぁ!」

「仮でも朝練あるんか!?」

まっちゃんはほんとに人気者だなぁとつくづく感心する。

あっという間にまっちゃんのまわりには友達があつまっていた。

「松田くんスゴいね、さっき来たばっかりなのにもうまわりに人がいるよ」

桜もまっちゃんの人気にビックリしている

「まっちゃんは男女関わらず人気だよ!モテるとかじゃないけど頼りにされ

てる!」

「うん!すごいわかる!」

なんでこんなに友達がいるんだろう

いつも笑ってて疲れないのかな?

私だったら無理だなー(笑)

まっちゃんはスゴいフレンドリーだから好かれるのかな。

「矢城!宿題見せろー!!」

と私の方によって来て腕で首をグイッと軽く絞めた。

「ギブギブギブーっ!!見せます見せます!!」

私はまっちゃんに数学の宿題を見せた。

「ったくさぁ、入学してすぐに宿題なんて出すことねぇよなー」

「ホントだよねー。私がまっちゃんに殺されるよー。」

軽く睨まれたので冗談です。とふざけた。

「二人とも仲がいいね?」

こっそりと桜が私に耳打つ。

「まあ、幼稚園からの仲だからねー♪」

「あっ....そ、そうなんだー」
(そういう意味じゃないよ、月葉ぁー!)

「ほらー、HR始めるから席着けよー」

面倒くさそうに黒渕の眼鏡をクイッとあげながら担任が入ってきた。

「今日もカッコいいね、京ちゃん!!」

「先生つけろ、先生を。」

なんて口角を少し上げながら答える。

「月葉ー、今日日直だぞー」

「えぇ!?なんで私なんですか!?出席番号からでしょ!!」

「お前生徒会立候補者だろ?めんどくさいからやれ(笑)」

「なにそれー!それだけでー?」

そうなのだ。

私は別に目立ちたがり屋とかそんなんじゃなくて、ただうちのクラスに立候

補者がいなくて先生も大変そうだから仕方なく引き受けたのだ。

「はい、日誌。今日1日よろしくな」

とか先程とは比べ物にならないくらいの微笑みで日誌を渡してくる先生。

「....仕方ないから、やりますよー!感謝してくださいよー?」

「はいはい。」

とまた面倒くさそうにいつものペースに戻った。

「矢城やっさしいー!」

「はい、まっちゃんは遅刻と。」

「嘘です、すいません。出席してます。」

なんてふざけながらHRを済ませた。

「月葉、次は移動教室だってー!一緒に行こう!」

桜は可愛らしくぴょんっと私の背中に抱きついた。

「もちろん!行こ行こ」

つい最近に仲良くなったと言うのに私たちの友情の進みは早歩き。

恋愛は一時停止状態。

桜には他校に彼氏がいるらしくすっごいラブラブ!

デートしたときのプリクラを見せてもらったんだけどカッコよくて、優しそ

う!二人で手を繋いだり頬にちゅってしてたり....

見ててこっちが恥ずかしくなったな。(笑)

誰もが憧れるラブラブカップル!今日は放課後デートらしい。

羨ましいなぁ....

あとから知ったことだけど、桜の彼氏は年上で中学の部活で知り合ったらし

い。名前は松原 凛。陸上部で県大会一位という県内では有名人。

そんな有名人と付き合っている桜ってある意味スゴい....。

「月葉?ボーッとしてないで早く行こう?」

「あ、ごめんごめん。」