まっちゃんが下を向いていた私の顔を強引に上げられてしまった。

「なに、泣いてんだよ」

一瞬驚いて言葉を詰まらせた。

「な、泣いてない!これは....あ、欠伸をしたからであって!」

必死で言い訳をした。

「欠伸だけでこんな涙がでるんだ?

お前、嘘つくの下手すぎだろ。なにがあったか言えよ」

「ほんとに!ほんとに何もないから....」

「なんもないのに涙が出るわけないだろ」

やめて。

「やだ」

「言え」

やめて。

「言わない」

「言え」

.......っ

「言わないってば!うるさいよ!!なにもないからなにもないって言ってるの!まっちゃんにはわかんないよっ!!渡しのキモチなんてっ!私に構わないでよ!放っておいて!」

違う。こんなことが言いたいんじゃない。ほんとは誰かに....

「助けてほしいんだろ?」

「な、んで....なんでっまっちゃんは....」

「どうせ、直登のことだろ。さっき女と歩いてるとこ見たし」

その言葉にとどめを刺された。

「っ.....」

「わかりやすいんだよ。お前は」

「知ってるっ....もん...直登が、私のことをっ...見てないことなんてっ、わかってた...もんっ」

少し治まったはずの涙がまた流れ出した

「恋愛なんて、めんどくせーことしかねぇよ」

そう言って私の頭をぽんぽんっと撫でた。

まっちゃんの暖かい手の温もりが伝わってきて安心した。

まだ肌寒い春の夕暮れの風が頬を通った。

「恋なんてめんどくせぇ」

「うん、そうだね」



その後、まっちゃんが丁寧に家まで送ってくれた。

「....お礼言わないとな」

そう思いLINEを開いた。


那奈から1通

公式アカウントから3通

.....直登から2通


私はスマホの電源を落とした。

「....どうすれば、いいの?」

電源を入れてまたLINEを開いた。

直登のLINEを開いた。

『俺、お前になんかしちゃってた?』

『そしたら、ごめん。』

違う、違う違う。

直登は何にも悪くない。悪いのは弱い私だ。

弱いところを見せたくなかったから、情けないところをみせたくなかったか

ら。だからあんな態度を取ってしまった。

ただ怖いことから逃げてただけ。

怖がってても何も始まらないんだろうな...。

直登に私の気持ちを伝えるべきか、そうでないか。

わたしは途方にくれていた。

取り敢えず、返信はしとかないとかな。

『ううん、直登は何も悪くないよ。ごめんね。』

もう、嫌だな....こんな自分うんざり。

暫くしてから電話が来た

直登からだった。

『ごめん、電話なんかして。

でも、なんかあるならどうしても話してほしいんだ。そうじゃないと気持ち

悪くて。....俺なんかしちゃってた?』


......決めた。

逃げるのはもうやめよう。弱い自分にはサヨナラしよう。

『平気だよ。じゃあ、話聞いてくれる?』

カミサマ、私に勇気をください。

『うん』

直登と私の仲を壊す勇気を...

『私、直登のことが好き。』

.....これで、いい。

これで、直登と私のお友だちごっこはおしまい。

『....俺には、好きなやつがいる。』

『....うん、わかってる』

そして謝られて、おしまい。

『でも、ありがとう』

『......え?』

『話してくれて、さんきゅーな。』

『...っ。どういたしまして!』




お礼を言うのは私の方だよ、直登。

好きにならせてくれて、私の気持ちを聞いてくれてありがとう。

大好きだったよ。