儚恋~ハカナコイ~


朔埜 一途side


俺は矢城が恋愛音痴ってことは知っていた。

だから陽汰と何度かすれ違うかもとは予想をしてた。

けどこんなに早くに別れるなんて思ってもなかった。

原因は明らかに陽汰の浮気。

陽汰は告白をされてロクに返事もせず遊んでたぶらかしてた。

『お前、矢城いるのにいいのかよ。しかも連絡とってねんだろ?』

俺は矢城が可哀想に思えてきて陽汰に言った。

『平気だって。あいつ入院してんだぞ?』

なんて笑いながらそう呟いた。

三回目の浮気デートの日。俺は暇だったから暑さを避けるように図書館に

行った。陽汰からちょいちょい連絡がきていてどういう状況か知らせてきた

りした。俺には関係ねぇだろ。

図書館を後にしてゆっくり歩いてるとき、矢城を見つけた。

矢城の視線の先には陽汰。

急いで連絡するが気づかない。俺は誤魔化そうと思って矢城の方に足を進め

ようとしたとき、笑って山野と行ってしまった。

矢城とは何回も同じクラスになったからわかる。完全に我慢している。

混乱しているのに違いない。

大事な退院日に呑気に浮気なんてよくしてられるよな。ばかだろ。

俺は絶対に傷つけたりなんかしない。

急に矢城のところに行って抱き締めたくなった。無理すんなって声をかけた

くなった。でも今そんなことしても今は矢城の何にもならない。

同情心なんて矢城にとっては悲しい感情でしかない。

矢城が珍しく授業に出ていなくて屋上を覗いてみたら案の定手すりに寄りか

かっていた。その表情は酷く寂しい顔だった。

しかし俺の顔を見た瞬間ニッコリ笑って俺の名前を呼んだ。

なにもしてあげられない自分がどうしようもなくウザったい。

俺は今まで恋愛なんてどうでもよかった。

けど矢城のひたむきな姿をみてちゃんと恋に本気になろうって思った。

バカみたいだけど適当じゃだめなんだって思った。