いつの間にか寝ていたらしく自室にアラーム音が鳴り響く。

そのアラーム音はいつもより寂しい音色。

いつもより静かな朝。

変わらないのは暑さと体のダルさ。

窓を開けると室内が暑さで充満する。

「あ、日差し....」

私は慌てて窓とカーテンを閉める。

そして着替えて日傘を持ち外に出る。この家とはしばらくばいばいだね。


街は休日なので賑わっている。

なるべく日陰を通りながら歩く。

すると聞き覚えある声がする。横を見ると銀がいた。

こっちに向かってきているが私に気づいていない。

銀の私服ってユルいんだなぁ。さすがサッカー部かっこいいね。(笑)

銀が顔を上げたら私と目が合い早足でこっちに向かってくる。

「月葉!体調平気か?崩したって聞いてたから....」

眉を下げて心配そうに聞いてくる。

「平気平気!ただの貧血だよ!でもしばらくは入院することになったから部

活行けないかも....ごめんね?」

「大丈夫だよ、早く治して戻ってこいよ!それからその服似合ってるぞ」

照れるように笑って走って行ってしまった。

私はその背中を見送り再び歩き出す。

やっと病院に着いた。そして病室を案内されて早々検査が始まった。

私の病気は病例が少なく難しい病気。

治す手だてもなくただ進行を止める薬を飲むことしかなにもない。

しかし急の失神や貧血があるので入院させられた。

入院生活はなにもいいことはなくつまらない日々だった。

入院してから3日後に部屋が一般病棟に移された。

病室には一人の女の子がいた。

同い年か一個下くらいかな?

「この子は黒羽香織ちゃんよ。香織ちゃんもつい最近に入院したばかりな

の。月葉と同い年よ。香織ちゃん、この子は矢城月葉。今日からこの部屋だ

から仲良くしてあげてね」

看護師で私のお母さんの友達の茅捺さんが紹介してくれた。

香織ちゃんか。

香織ちゃんは私を少し睨んでお辞儀をした。私も笑って頭を下げた。

少しして茅捺さんが病室を出ていった。

私は棚に洋服や持ってきたものを詰めていく。

棚の上には皆からもらった写真立てに私と桜や銀、朔、陽汰の写真が飾られ

ている。写真立ては4つ。その4つの写真立てにクラスのみんなからたくさん

のメッセージが書かれていた。

"早く戻ってこい"

"月葉ちゃんの笑顔がまた見れまな待ってるよ"など書いてあった。

嬉しくて口角が上がる。早く学校に戻りたい。そう思っていると。

「月葉ちゃん、だよね?」

「あ、うん、そうだよ。よろしくね香織ちゃん」

突然話しかけられたのでビックリした。

「よろしく。香織でいいよ。」

「じゃあ私のことも月葉って呼んでね!」

さっきは睨まれてお辞儀されたから話ずらかったけど話してみれば意外に普

通に話せた。

「香織は病気なの?」

「うん、そう。でも手術をして半年すれば退院できるの。」

「そっか!早く治るといいね」

「月葉は?」

「私も病気。でも治らないの。」

私は優しく笑ってそう言った。

不思議と香織には自然にびょうきのことを話せた。

話終わると香織は笑って

「月葉は強いね、だからこんなにも優しいのね」

そう言った。それで初めて香織の笑った顔を見た。

可愛らしい目を細めて眩しそうに笑う。

「ありがとう。今を大切に生きなくちゃね」

「この世界はつまらないって今まで思ってたけどそういう思いを持つことで

案外楽しい世界だと思えるのかも知れないわね。」

香織って涼しそうな顔をしながら結構スケールの大きいことを言うな(笑)

しばらく香織と話していると陽汰と朔と桜がやってきた。

「つーきーはぁー!!」

と桜がぎゅっと抱きついてきた。私はいつものように頭を撫でる。

陽汰は優しく笑って体調のことをマメに気にしてくれた。

朔はいつものテンションでたっくさん笑わせてくれた。

するとノックがして茅捺さんが入ってきた。

「騒がしいぞぉーお前らぁー」

とおどけて注意された。

すいません(笑)と謝るとニッコリ笑って言った。

「でも元気なのはいいことね。その勢いで病気もきっと良くなるよ」

茅捺さんの言葉に励まされた。

香織も皆が来てくれて私たちの会話を聞いて笑ってたからよかった。

病院はつまんないけど大好きな人と会うのはこんなにも大切に思えるのは病

気になってわかったんだと思う。

病気になってよかったとは一生思わないけど病気になって皆の大切さがよく

わかった気がする。

皆が帰って香織とたくさん話してあっという間に消灯時間になっていた。

寂しいななんて思っていたらLINEがきた。

陽汰からだった。以心伝心なんて思いながら内容に目を通す。

『塾テストの追い込みなう。つまんね。』

それに写真もあって朔が悪戦苦闘していた。

『朔だ笑。頑張れー(`・ω・´)』

大変そうだなぁー。LINEしてたら迷惑かな。

『今20分休憩。通話できる?』

なんかスゴい。やっぱ気持ちって伝わってるんだね。

『うん、いいよ。』

消灯以降では病室内で電話はできないからカウンターに急いだ。

そしてすぐにベルが鳴る

「もしもし」

『ごめんな、遅い時間に』

「ううん、平気だよ。頑張ってるんだね」

『俺は別に頑張ってないかな。(笑)』

陽汰がそう言うと朔がふざけんな、お前!と叫んでるのが聞こえてきた。

「ふふっ、楽しそう。いいな。」

『月葉も退院したらまた楽しく過ごせるよ』

陽汰の優しい声がそう言った。

その声色はとても心地よいものだった。

「うん、そうだね」

私も陽汰に負けないくらいの優しい気持ちで返事をした。


入院して1ヶ月

私は晴れて退院した。

体の調子が安定しているため退院となった。

厳しい運動はしないように言われた。

病院を出ると桜が私を迎えに来てくれていた。

「月葉...退院、おめでとぉー!!!」

いつものように桜が飛び付いてきた。

ありがとう、と心から感謝する。憂鬱な病院生活を少しでも楽しくしようと

一生懸命頑張ってくれたのはだった。

でも一週間前くらいから、陽汰がお見舞いにきてくれなくなった。

会いたい、けど塾のテストがあったりしたのかなって思って気にはしていた

けど我慢した。

「陽汰さ、最近忙しいのかな」

「え?なんで?」


「いや、一週間前くらいからお見舞いきてくれてないんだよね

塾のテストかなんかかな?」

「塾のテストはとっくに終わってるよ?」

「じゃあ、忘れてたのかな....」

「あ.....」

桜は足を止め目を見開いた。

「桜、どうしたの?」

そう聞いてもなにも答えないで下を向いた。

桜の視線の先は大きなショッピングモールの入り口。

そこには、陽汰と同い年くらいの女の子。

楽しそうに並んで歩いている。

然り気無く頭をポンポンとしたり、頬をつねったり。

「やっぱり、病気の彼女なんて嫌だったみたいね(笑)」

「月葉......!」

「桜、行こっか!」

「......うん」