松田 陽汰side

体育の授業中に月葉が突然倒れた。

先生が保健室に連れていくというので俺が代わりに月葉を運んだ。

保健室に着きドアを開けるが誰もいない。

月葉をベッドに寝かせて冷えピタを額に貼った。

白い頬が赤く汗をかいている。

汗でついている髪の毛を優しくわける。

月葉の顔は熱く呼吸が荒くなっていた。

するとゆっくり月葉の目が開いた。

「まっちゃん.....」

月葉は弱々しく俺の名前を呼んだ。

目にはほんのり涙が溜まっていた。

「平気か?お前、小さいときから体弱くねぇんだから無理すんなよ。」

そう言って頬を触る。まだ熱いが汗は完全にひいていた。

「ごめ...んね、迷惑...かけて」

途切れ途切れで月葉が囁く。

ツラそうな顔をして笑う。なんでいつも強がるんだ。

小さいときからそうだ。あのときも雷だってキライなくせに笑ってて。

「無理、すんなって」

見てるこっちがツラいんだ。

小さい頃からいつも一人でお母さんもいなくてお父さんもいない。

寂しいはずなのにいつも笑ってて。

「して...ないよ?」

ほら、今も。苦しいはずなのに優しく笑う。

「....月葉は俺が守るから。」

「え?」

「月葉、俺を友達から彼氏に変更してくんない?」

「ど、どう....したの?」

「こんなときに悪いけど、いつも強がってる月葉みてると辛くなるんだ」

一人になんかさせない。

「もう、一人にしない。俺がずっと傍にいる。」

すると月葉の目から涙が落ちる。

「ほん...とに?」

「あたりまえ。好きだよ、月葉」

次から次へと頬に涙が伝っていく。

「わたしも.....好きだよ」

「おう。」

月葉の涙を指ですくうように撫で額にキスを落とした。

「もう一人じゃねぇから、安心しろ。」

それに答えるようにわずかに頷きまた目を閉じた。

俺は月葉が起きるまでずっと手を握ってきた。


月葉がもう無理をしませんように。

強がりませんように。