そこは真っ暗な世界だった。
右も左も分からずただ、あたりを見渡す少年が一人。
その時パッとその少年を明かりが照らした。
「うっ……」
少年眩しさに小さな声を出す。
それでも前を見る。
どこからかかすかに聞こえてくる声。
「貴方の名前は?」
「俺…の?」
少年は聞く。
「貴方の名前は?」
かすかにもう一度聞こえる。
少年は戸惑う。
今生まれたばかりの少年には名前など分からなかったから。
「貴方の名前は?」
その時どこかで文字が入力された気がした。
「貴方の名前は?」
「俺の名前は…ザガット…ザガットだ。」
「ザガット…本当にそれが貴方の名前か?」
「……はい。」
少年は答える。
「ではザガット貴方は呪われた地に行き、魔王を倒す旅に出なさい。」
かすかに聞こえてくる声がまた少しかすかになる。
「魔王を倒す?呪われた地?」
「大丈夫、道は開けていますよ。」
すると真っ暗な世界が急にパッと明るくなる。
とても明るくて地面などなかった。
少年は空の上にいた。
「なっ!」
少年は一気に落下する。
「なんなんだよーーーー!!!」
少年はそう言って大きな海原に落ちた。
それが勇者ザガットの誕生だった。