10年後

恭ちゃんに初めて電話をしたのは、公園で別れた後、すぐだった。






『ビックリした?電話かけたよ!今日はありがとう。』
私はさっき恭ちゃんと話した時と同じよう、笑えていた。



『本当ビックリした!今週末はさ、必ず出てきて?いい?』
そうゆう恭ちゃんに
『うん。分かった!また週末ね!』
と約束した。








夏のクラブはやっぱり人が多い。
ごった返すフロアで今週もまた恭ちゃんを見つけた。



『お疲れ』 『疲れてないよ~』

いつもの恭ちゃんだ。




『今日は紹介したい人がいるんだ!』
とゆう恭ちゃん。
この間、たくさん紹介してもらったばかりだ。
友達が多いのは分かるけれど、一気に紹介されても覚えきれない。



『うん。』と乗り気ではない返事をよそに恭ちゃんが連れてきたのは、明らかに年上の女性だった。




(え…なにそれ…)





気持ちが顔に出ていた。




(紹介するのはいいけど、彼女ってこと?)








その女性は恭ちゃんと同じ笑顔で近付いてきた。


『こいつ俺の連れのエリ!いい奴だから、何かあれば相談して!』

エリさんが 『よろしくね!』 と笑い、手を差し出してきた。
それに応えるように私も 『よろしくお願いします。』と握手を交わした。







それからエリさんは私のそばを離れなかった。

エリさんは色んな話をしてくれた。
恭ちゃんとはクラブで知り合ったとゆう事。
私たちよりも年上で恭ちゃんは弟みたいだとゆう事。
そして、恭ちゃんが私の為にエリさんを呼んだとゆう事。





『恭ちゃんから電話きてさぁ、紹介したい子がいる!とか言うもんだから、てっきり彼女かと思っちゃったんだ!』

『違ったんだね。ごめん。舞い上がっちゃって!でも嬉しかったんだよ!そんな事言うようになったんだ~って!』

エリさんは少し興奮していた。









『恭ちゃん、あなたの事、気にかけてた。』




最後は聞こえない振りをした。











恭ちゃんは優しい人だ。
それは知っていた。
でも心配してもらうほど仲が良い訳ではない。
私は黙ってフロアを出た。






帰ろうかと思ったが、挨拶なしに帰るのは感じが悪過ぎる。
もう一度フロアに戻りエリさんを探した。
深夜が近付いているクラブは先ほどよりも人が多い。









(見つからない…どうしよう…)









そう思った時、

『いた!!』

と声がした。












振り向くと恭ちゃんが笑って、私の手を引いていた。








『どこにいたの~?』と笑う恭ちゃん。
その隣にはエリさんもいる。
『見つけられて良かった~!』と笑うエリさん。

『ごめんなさい。今日はもう帰るね。エリさん、今日はありがとう!それから恭ちゃんも。本当にありがとう!』

そう言って帰ろうとする私の手を引いたのはエリさんだった。








『恭ちゃん、人が多いし、送ってあげてよ!私心配だから!』




『了解~!じゃぁエリ!またな!』

そう言って恭ちゃんは、エリさんから託された私の手を引いた。









帰り道、恭ちゃんと公園に立ち寄った。


『エリさんを紹介してくれてありがとう!とってもいい人だね!』
私はまた笑顔だった。

『あ~いいんだよ!エリは本当いい奴だからさ!仲良くして!』
そう笑顔で答えた。




恭ちゃんは誰もが憧れる顔立ちだ。
でも、それ以上に本当にいい人だった。
いつも笑っていて、優しい。
人を惹きつける魅力がある。
恭ちゃんの事がだんだん分かってきていた。






でも恭ちゃんの全てを知った訳ではない。
もちろん、恭ちゃんも私の全てを知った訳ではない。

でもそれでいいんだ。

思い出したくない事も話したくない事もある。





私は晃をまだ思っていた。