同じ日に産まれ同じ血液型を持つ2人。
でも2人が向かう先は別れだった。
変わらないのは晃のまっすぐで輝く瞳だけだった。











春を迎え私は3年生になった。
学校では相変わらず誰とも口をきいていない。


そして、また夜の街へ戻った。
よく笑いよく話した。晃を思い出す事が多かったが、忘れたかった。












日本を経つ前日。晃と会った。
ミントグリーンの車はもう海岸へは行かなかった。
私の家の前で止まったまま。




『いよいよ明日だね。』
『うん。』





同じ日に産まれ同じ血液型を持っていてもやはり2人は他人だった。
心の繋がりも今はもう昔の事だ。
形を変えてしまった2人は友達にはなれなかった。



『愛してる。』
晃がつぶやいた。またまっすぐな瞳が私を捉える。



目の前がぼやけた。もう止まらなかった。晃がいないとだめなんだ。








『行かないで…』









やっと言えた言葉はもう遅かった。
分かっていた。晃は明日日本から経つ。
それは変わらない、変えられない事実。
もう元には戻らない。











私たちは最後にハグを贈った。
同じ日に産まれ同じ血液型を持つ私たちは離れてしまう。



ミントグリーンの車は静かに走り始めた。










私はずっと空を見ていた。
晃はもう出発したんだろうか。無事飛べたんだろうか。今はどこにいるんだろうか。


涙でぼやけた携帯の画面を見つめる。
晃のアドレス帳を出し、編集ボタンを押す。
名前の最後に入力した。
ハートマークを。











それから夜の街でとにかく遊んだ。
久し振りに顔を出した私にみんな優しかった。
誰も詳しくは知らない。
だからこそ気楽で楽しかった。

週末はクラブへ行き朝まで踊った。
一気に春になった気候は夜遊びには最適だった。
誰と話したか、どうやって帰ったか、そんな事はどうでも良かった。とにかく遊び続けた。





『冬は何してたの?』




突然聞かれる事もあったが、『なにも』と返せばそれ以上は聞かれない。
思い出す事を怯えるほど子供ではなかった。
でもやっぱり思い出したくない、晃との思い出。
時々涙が出る日もあったが、夜の街でごまかしていた。

もうそろそろ梅雨が始まる。
雨も私の涙をごまかした。