年が明けて雪が降る頃、私は夜遊びをやめた。
夜が寒くなったとゆう理由もあるが、本当は晃とずっといたかったからだ。
私の世界は晃が中心になっていた。

変わったのは私。
私には前進だった。


晃は何も変わっていなかった。
日焼けだと思っていたがそれは私の思い違いだった。

冬の雪の輝きで晃の瞳がまた輝いた。






『誕生日どうする?』
晃が言った。






私たちは同じ日に産まれ同じ血液型を持っている。
心の繋がりよりも、もっともっと深い繋がりを感じていた。







でもそう感じていたのは私だけだったかもしれない。
冬の風がとても冷たく感じた。


『特別な夜にしたいな…どう?』
『分かった。楽しみにしてて!』


17歳の誕生日は特別なものになる。
冬が終わり暖かくなる前、私たちはひとつ年を重ねる。
お揃いの物が増える度、私たちの思い出も増えていた。







ミントグリーンの車が走ってくる。
晃のまっすぐな瞳が私を迎えてくれる。



『寒くない?』
『うん。大丈夫だよ!晃は?』



昼の気温は暖かくなっていたが夜はまだまだ寒かった。







車が向かった先はいつもの海岸だった。
初めて会って、初めて気持ちを伝え、初めてキスした場所。
この海岸は私たちの特別な場所だ。
全てが始まった思い出の場所。





車を降り、夏の終わりより冷たくなった海風を受ける。
同じ日に産まれ同じ血液型を持つ私たちの手は繋がっていた。




『で、20歳の抱負は?』
晃のまっすぐな瞳を見つめた。

少しの沈黙の後、晃が話した。
まっすぐで輝いている瞳で私を捉えた。









『オーストラリアに行こうと思う。』










時が止まった。
繋いでいる手が汗ばんでいる。
目の前がぼやけそうになるのに気付いた。








『なにかあるの?』
そう聞くのがやっとだった。






『自分を試そうと思う。』










(私は?私はどうなるの?どうして私を置いていくの?愛していないの?)


聞きたいことは山のようにあった。でも聞けなかった。今話すと涙がこぼれそうだった。




『ごめん。突然で。でもいつ話そうか悩んでた。こんな形になるとは思ってなかったけど、でも自分を試したいんだ。帰国の予定は考えてない。本当にごめん。』









晃は私の事が嫌いになったとかもう愛していないとか、そんな話ではなかったんだ。
晃は自分自身をよく分かっていた。
そして、私の事も。

『置いていく訳じゃない。でも…結果的にそうなってるね…ごめん。』





ごめんじゃ分からない。きちんと伝えてほしい。これからの私たちを。




私は言えなかった。
『行かないで』と。



『それで出発はいつなの?』
『来月…』









それ以上何も言わなかった。
言えなかったんだ。
終わらせたくなかった。けれど終わりだ。
遠距離恋愛なんて続かない。
晃のまっすぐな瞳がないと、この関係は続けていけない。
同じ日に産まれ同じ血液型を持つ私たちはいつも一緒だったから。





海風が私たちを後押しした。





『別れよう。』










そう小さくつぶやいたのは私だった。