2人の家に帰る。

私たちだけの世界。
私たちだけの居場所。

2人の大切な空間。




だけど、もう違って見えた。









息を切らせた晃が勢いよくドアを開けるまで、私は何をしていたんだろう。


もう何も分からないや…








『美香ちゃんから聞いた…』




そう言った晃は私を見なかった。






時計の音だけが聞こえる静かな時間。
晃が見えなかった。
私も見えなかった。




見てなかったんだ…










『どうしてだろ… 俺たち大切にしすぎてたのかな…』

晃が静かに話し始めた。





『初めて会った時、同じ誕生日で血液型も同じで、本当に運命かと思った。こんな偶然ある?って。オーストラリアに行っても、ずっと繋がってるって思ってた。だからまたこうして会えて、そして一緒にいる。一緒にいればいる程、重ね合わせてた。相手を自分自身だと。そう思ってた。』



『美香ちゃん、「悪気はなかった」って言ってた。だけど、俺も思ったんだ… 俺たちは特別じゃなかったのかも… 「言葉では説明出来ない」 それが俺たちだったんだよな…』




そこまで言い終えると晃が泣いた。
初めて、子供のように泣きじゃくった。









晃も私も気持ちは同じだった。

同じ日に産まれ同じ血液型を持つ私たちはいつだって、繋がっていた。



別れる時でさえ、私たちは繋がっていた。




これは心の別れなんかじゃない。






だけど、続ける事は出来なかった。










『そうだね… 晃?だけどね、あなたを愛してる。 ずっと、これからもずっと。晃だけを愛してる。』

そう言って、私も泣いた。












晃が私を抱き締める。
晃の指が私の涙をすくう。







そして、求め合う。






もう元の2人には戻れない。
だけど、永遠の別れなんかじゃない。





だって、私たちは誰よりも深く繋がっているのだから。