次の日、晃は私にもう一度聞いた。

『俺は分かり合いたいと思ってる。何を感じてるのか。何がつらいと思わせてるのか。』


晃は私を抱きしめたまま、まっすぐに見つめた。







『そうだね…晃の気持ちはとてもよく分かってる。』

『これから聞くことは全て聞き流してもらえないかな?これは私自身の問題なの。いい?』









初めて1つが2つになった。
『私自身の問題』
そんな事、私たちには存在しなかったはずなのに…









それからゆっくりと時間を掛けて私は話した。




美香ちゃんの事。

美香ちゃんがいい子だと本当に思っている。
だけど、それは嫉妬と背中合わせになっている。
その事が私をつらくさせている。
どうして、もっと素直になれないんだろうと思っている。





そして晃の事。

晃のことがとても大切だと本当に思っている。
だけど、羨む気持ちが背中合わせになっている。
その事が私をつらくさせている。
どうして、もっと素直になれないんだろうと思っている。










晃はただまっすぐに私を見つめている。
そして抱きしめる力が強くなっている。




最後に晃がまっすぐに答えた。







『つらくさせているのが俺だったのなら、俺もつらいんだ。』

『俺たちはいつも気持ちを分け合っている。相手を大切にする事が自分を大切にする事に繋がっている。自分を大切に出来なかったら、相手を大切にする事なんて出来ない。』

『俺のすべてなんだよ。いつでも。いつまでも。』













目の前が滲んでいた。
雨のせいじゃない。
晃の瞳も輝いていた。
それは初めて見る輝きだった。








2人とも涙で濡れた顔を拭くように何度も何度もキスをした。






夏の始まり。
また晃と出会った季節が繰り返す。