雨が全てを滲ませ、誤魔化してくれるのなら、このまま何事もなかったように続けたい。


私の気持ちも一緒に誤魔化せたら良かったのに…


だけど、そう甘くない。










晃と一緒にタクシーで帰った。
車のなかで私たちは何も話さなかった。
体調が悪いとゆうのがただの言い訳である事は、晃も分かっていた。


同じ日に産まれ同じ血液型を持っていても本心までは分からなかった。


私の心も、晃の心も…








部屋に着いて、照明をつける。
間接照明を選んだ事を今日ほど良かったと思った日はなかったかもしれない。
薄暗い部屋で向き合っていた。








『何があったの?』





突然、晃が核心をついた。








言えなかった。
子供じみている。
素直で純粋な子に嫉妬をしているなんて。
ましてや、私よりも2つ年下の子に嫉妬なんて。



恥ずかしかった。
だけど、とてもつらかった。
どうしたらいいか分からなかった。



これが私の性格なんだろうか。
人を妬み、そして羨む。
本当の私の気持ちなんだろうか。
それすら分からなかった。





『今日の本当に事ごめんなさい。せっかく誘ってもらったのに、上手に出来なくて。』




まただ。
また誰かと比べている。




誰かじゃない…美香ちゃんだ。








『それはいいんだよ。お願いだから教えて。言ってくれなきゃ分からないよ。』





同じ日に産まれ同じ血液型を持つ私たちは誰よりも深く繋がっていた。
私たちは自分を大切にするように、自分の分身を大切にしていた。


でも、やっぱり他人だ。

言わなければ分からない事の方がきっと多いんだ。





まっすぐ輝く瞳が私を捉えた。


初めて、逃げたい。
そう思った。


晃からじゃない。
私自身からだ。









『やっぱり言わなきゃ分かんないか…』









私は逃げた。



晃から…そして自分自身から…















10年が経った今でもこの日のことをとても後悔している。


どうして言わなかったんだろう。
どうして分かりあおうとしなかったんだろう。


どうして…



どうして私は逃げたんだろう。








もし…




もしも、本当に繋がっていたのなら。


もっと他の道があったのかもしれない。