10年後

『恭ちゃん…久し振りだね。何してるの?』


どうして。
どうしていつも私を見つけてくれるんだろう。




『いるかなと思って来てみた。そしたらいた!』




『…ってゆうのは嘘!今からクラブ行くとこ!』
恭ちゃんは笑っていた。






『そっか。私は今から帰るとこなの。それじゃ。』


そう言って私はまた歩いた。
振り返ってはいけない。


私と恭ちゃんはもう過去の人だ。















『待って!』













振り返ると恭ちゃんが笑っていた。
息を切らせながら。
いつかの夏の始まりと同じ。



恭ちゃんが笑っていた。











ポケットの携帯が鳴っている。
私は振り向く。
だけど、もう笑えない。




『ごめんね』





そう告げ、私は歩いた。















着信は晃からだった。
ハートマークはまだつけたままだ。






『もしもし?』

いかにも体調が悪そうな声で電話を取る。

『今どこ?美香ちゃんから帰ったって聞いて…今どのへん?俺も帰るから。』

晃も笑っていなかった。
何かを感じ取ったのかもしれない。
だけど、何も聞かれたくなかった。


明日はお互い休みの日だ。
初めて憂鬱に感じた夏の始まりだった。



もうすぐ暑くなる。
でもその前に必ず雨が降る。

雨が全てを滲ませ、そして誤魔化す。
始まりの前には必ず何かが待っているんだ。