冬を終え、窓を開ける。
暖かい風が私たちの部屋へ入ってくる。
窓から見える川が気に入ってこの部屋を選んだ。

もう少しで春が来る。

今年も私と晃は一緒に年を重ねるんだ。









一緒に暮らし始めて、今まで知らなかった晃の顔をたくさん見ることができた。

私が仕事で怒られて帰って来た時、晃は前向きだった。

『大嫌いな相手を怒ったりしない。期待してない相手を怒ったりしない。だから、愛されてるし、期待されてるんだよ。』

まっすぐ輝いた瞳のまま、私を包んだ。


晃はどんな事にも前向きだったし、決して人を悪く言ったりしなかった。

オーストラリアで1年、経験した、生き方の選択肢。考え方の選択肢。

それを私にいつも教えてくれているように思えた。





だから、美香ちゃんの事だって悪く言ったりしなかった。

『あの子は本当いい子だよ。今、店に人が足りないんだ。誘ってみようかな…』

晃は決して人を悪く言ったりしない。疑ったりしない。


それが私にはとてもつらかった。


晃が美香ちゃんを褒めるほど、私の嫉妬心は大きくなる一方で、美香ちゃんを嫌いになりそうだった。





本当に嫌いだったのは、美香ちゃんじゃない。

私自身だ。








私自身を嫌うとゆう事は…
私は晃を…














今年の誕生日はとても質素だった。
2人だけ。2人しかいない。
ケーキを買って、キャンドルを灯した。
私たちの部屋がオレンジ色に暖まった。



今年の誕生日は好きなことを好きなだけすることになっていた。





『誕生日おめでとう!!』



そう言ってキスをした。


同じ日に産まれ同じ血液型を持つ私たちは今年も一緒に年を重ねた。
深く繋がっていた。
どこまでも…
深く…深く…



ベットで好きなことを好きなだけ楽しんだ。




今が何時かも分からない。
だけど、晃は隣にいる。
私たちの手は繋がっている。



繋がっていたのに…