10年後

『それじゃ、俺たちそろそろ行くわ』
晃がそう言って、私の手を引いた。

『分かりました!気を付けてくださいね!』
美香ちゃんはそう言って笑っていた。








久し振りに乗る、晃の車。
仕事へ行く前わざわざ実家に戻って乗って来たと言った。

ミントグリーンの車の走る先は…
















『ちょっと晃… すごく寒いんだけど…』
そう言った私の手を笑いながらまっすぐで輝く瞳で見つめながら引いていた。





久し振りに来た海岸は何も変わっていなかった。

晃と初めて気持ちが通じ合った海岸。
晃と別れる事になった海岸。
去年の夏に再会し、気持ちを確かめ合った海岸。

そして、『晃を忘れられない』と泣いた海岸。
恭ちゃんが私を見つけた海岸。






冬の海風は想像以上に寒く、私の顔は寒さで真っ赤になっていた。






『ここで、俺たち何もかもが始まったんだよな…新しい年はやっぱりここで迎えたいと思ったんだ。』

『一昨年、オーストラリアへ行った事、俺は後悔していない。正直、一昨年は彼女を作る気はなかったんだ。だけど、どうしても気持ちが止められなかった。』


私は頷く事しか出来なかった。


『あの時、別れた事だけが唯一の後悔だった。オーストラリアへ行ってからも何度も何度も連絡しようと思った。だけど…住所くらい聞いとくべきだったよな…』

そう言って晃が笑った。


『私も…1回だけメールしたんだ。元気?って…メールアドレスは無効ですって返ってきちゃったけど。』

晃はまっすぐ輝く瞳で私を見ていた。

『だけど、晃が元気でさえいてくれれば良かった。それだけを信じていたんだよ。私はそれだけで頑張れたんだよ…』







晃は私を抱きしめた。
私も晃に腕をまわした。


お互い気持ちは分かっていた。
愛し合っていると確信はあった。

だけど、言葉に出すともっと気持ちが大きくなった。
自分も。自分の分身も。









2人の居場所で2人だけ。
2人だけで堕ちていく。
どこまでも。どこまでも。
深く。
深く、深く、繋がっていく。



どれだけ体を重ねても1つにはなれない。
だけど、私たちは最初から1つだった。
同じ日に産まれ同じ血液型を持つ2人は初めから1つだったんだ。



晃を大切にするとゆう事は自分を大切にするとゆう事。
晃を抱きしめるとゆう事は自分を抱きしめるとゆう事。


誰よりも何よりも深く深く大切にした。
大切にし過ぎていた…