晃のDJのセンスは海外にいただけある。
地元のDJ達が知らない曲にも晃は詳しかった。
褒められ、評価される晃を私は誇らしく感じていた。



晃は社交的だったし、私も晃についてまわっていた。
けれど、若いうちからクラブやパーティーに顔を出していた私はいつしか

『パーティーガール』

とゆう肩書きがついていた。








『パーティーガールだって!格好良いじゃん!昔からクラブに通ってたなんて知らなかったよ!』


薄暗いフロアでも、晃のまっすぐな瞳は輝いていた。




『そうだね…でも複雑だよね…変な呼び名はいらないんだけどさ…』









晃にクラブ通いをしていた事は隠していた。
軽く見られるのが恥ずかしかったし、隠せば隠すほど言いにくくなっていた。


だけど、晃は責めたりしなかった。
そんな私の事も受け入れてくれていた。










そう。
隠せば隠すほど言いにくくなる。
隠していただけなのに…
言えなかっただけなのに…



いつしかそれは

『嘘』

とゆう名に名前を変えてしまう時がある。












フロアで踊り続ける私を見て、晃も楽しそうにしていた。
ブースに立つ晃と目が合えば、私たちはいつも笑い合っていた。



毎週クラブへ通い、朝まで遊ぶ。
そのまま晃の部屋に帰り、私たちは繋がり合う。





同じ日に産まれ同じ血液型を持つ2人はいつもお互いを求め合っていた。


求めることで、触れ合う事で、ひとつになることで、私たちはお互いの存在を確認していた。


とても大切に大切にしていた。
大切にし過ぎていたのかもしれない。


まるで自分自身を扱うように。

寂しくないよう…
悲しくないよう…
傷つかないよう…



私たちは繋がり合っていた。



『オーストラリアに行った時、来て良かった。って思ったんだ。日本と比べて考え方も生き方も選択肢が多かった。』

『だけど帰ってきて、顔を見た時… あぁやっぱり帰って良かった… 本当にそう思った。』




薄暗い晃の部屋で私の髪を撫でていた。



『私も… 私も、晃とまたこうして会えた事、本当に良かったって思ってる。』

『今も… 昔も… 昔から晃と出会えた事、本当に良かったって思ってるよ。』


そう言って晃の手を撫でていた。





お互いとても大切に大切にしていた。
大切にし過ぎていた…















今週もまたパーティーガールとDJは遅い時間にクラブのドアを開ける。

ピークタイム真っ只中
酔っ払ってる人。
潰れちゃってる人。
イッちゃってる人。


友達と挨拶を交わし、私はフロアへ進む。














『いた!』











そう笑った人がいた。














晃と手を繋いだままで、私は後ろを向く。
晃も一緒に振り向いた。


晃と繋がったままで良かった。





晃の手の暖かさとまっすぐな瞳がまだ必要だった冬の始まり。
恭ちゃんが笑っていた。