秋になり肌寒くなった頃、私と晃は誰よりも近くにいた。
仕事は変わらず忙しかったが、少しの時間をお互いに大切にしていた。
学生の時に比べれば、付き合い方は変わったが、晃を大切だと思う気持ちは変わらず、むしろ気持ちは大きくなっていた。







恭ちゃんの事は話さなかった。
晃がいなくなってから、晃への気持ちを貫けなかった事へ後ろめたさを感じていた。
そして、晃に軽蔑される事が何よりもこわかった。






本当に軽蔑したのは私だったのかもしれない。
自分を恥じ、そして軽蔑したのは…







誰でもない。
それは私自身だった。











10年後の今だって、晃は私を軽蔑したりしない。
変わらず私の事を…

















晃も日本へ帰ってきて仕事を始めた。
オーストラリアでレストランに勤めていたらしく、日本へ帰って来ても変わらずその仕事に就いた。
晃は夜中まで働く事が多かったし、周りにもたくさん友達が出来ていた。
そして、オーストラリアでレコードの魅力に触れ、DJとして活動していた。



平日はレストランのキッチンで汗を流し、週末はクラブ通い。

私も週末は晃のイベントへ顔を出すようになり、2人の共通の友達は増える一方だった。


それでも、今まで離れていた晃と一緒にいれる事が嬉しかったし、

『俺の彼女』

と紹介される事がとても嬉しかった。








そんななか、私はおそれていた。
いつかばったり会うんじゃないか。


いや。ばったり会うんじゃない。
いつだって、私の事を見つけてくれるんだ。