10年後

その夜、恭ちゃんはとても優しかった。私を優しく扱った。
もう優しさが苦しいと辛いと思わなくなった。
恭ちゃんだけを感じていた。恭ちゃんと私の2人だけ。


まっすぐ輝いた瞳を置いて私は前に進んだ。
















カウントダウンはクラブで過ごした。
それは恭ちゃんの提案だった。




『エリがさ~カウントダウンは皆で過ごそう!ってしつこいんだよな~。2人でゆっくりするよって言ったんだけどさ…』
恭ちゃんが申し訳なさそうに笑った。

『いいよ!皆で過ごそうよ。』
そう言った私は笑っていた。




カウントダウン当日、街に雪が舞い降りた。
積もるほどではなかったがやっぱり冬の寒さはつらい。

恭ちゃんは寒そうに歩く私を見て『大丈夫~?』と笑っていた。

『もう寒過ぎ…無理だよ~!恭ちゃん手繋いで~!』
駆け寄る私に恭ちゃんは『はいはい!』と優しく笑った。




私たちの関係は、あの夜から少しずつ変わっていた。
私は恭ちゃんに素直になったし、恭ちゃんは以前にも増して優しかった。
恭ちゃんの瞳は輝いていなかった。
だけど、いつだってまっすぐ私を見ていた。
そしていつも笑っていた。








クラブのドアを開け、エリさんを探した。
カウントダウン1時間前。
ごった返す薄暗いクラブで、恭ちゃんと私は手を繋いでいた。



『あ~!いた~!遅いじゃん~!こっちこっち!』
エリさんが笑って私たちを呼んだ。


私は恭ちゃんの手を離し、エリさんに駆け寄った。

『エリさ~ん!会いたかったよ~!』
思わずエリさんに抱きつく。

恭ちゃんに素直になれた私はエリさんにも素直になれた。
『よしよし』と頭を撫でるエリさんは本当にお姉さんのようだ。


『よし!カウントダウンが終わったら初詣行こう!』
エリさんが笑った。
私たちも笑って答えていた。








フロアが熱くなっていた。
人もだんだんと増えている。
カウントダウンが始まった。


5、4、3、2、1


『あけましておめでとう~!』
クラブにいた全員が声を揃えた。






恭ちゃんは私を抱き締めた。
薄暗いフロアの1番隅で私たちはキスをした。

それから小さくつぶやいた。
『あけましておめでとう』
2人とも笑っていた。









『あれ?エリどこ行った~?』
さっきから姿が見えなかった。
『ちょっと探してくるから、ここにいて』と恭ちゃんが言った。

今から初詣に行くとゆうのにエリさんが見当たらない。



『ここにいて』と言われたが、私もエリさんが心配だった。
それにごった返すフロアは暑く抜け出したかった。



私はクラブの階段を上がり、通りに出た。
まだ雪がチラついている。
とても寒かった。

あまりの寒さに人も少なかった通りで、去年を振り返っていた。









晃との別れ。
恭ちゃんとの出会い。










オーストラリアへ夢を追いかけた晃。
まっすぐ輝いた瞳を持つ晃。
同じ日に産まれ同じ血液型を持つ私たち。

だけど晃はもういない。
もう戻れない。


私が選んだのは…















『いた!』













私が振り返ると笑っていた。
そう。いつだって見つけてくれる。恭ちゃんだ。