10年後

恭ちゃんは私に近付き 『何してたの〜?』 と笑った。


私は俯き 『どうしてここって分かったの?』 と聞いた。





『いるかなと思って来てみた!そしたらいた!』とまた笑った。






恭ちゃんの優しさが苦しい。
どうしていつも笑ってるんだろう。
どうして私を追いかけてくれるんだろう。




もうこれ以上隠せない。
恭ちゃんは人をよく見ている。
だから周りに人が集まるんだ。
それが恭ちゃんの良い所。


いいじゃないか。そこへ飛び込んでも。
晃はもういないんだから…








『恭ちゃん… 私、話してもいい?』
『… うん。』
恭ちゃんは笑っていなかった。






恭ちゃんにだって覚悟が必要だ。









冬の海風が吹き付ける海岸で、恭ちゃんは私の手を握った。
それからゆっくりと晃の事を話し始めた。
この話が終わったとき、私は晃と終わらなければいけない。
恭ちゃんに全てを話すとゆう事は、
私は忘れるとゆう事なんだから。




恭ちゃんはずっと聞いていた。
ずっとずっと長い時間。
私を受け入れるように頷いていた。







『… それから晃はオーストラリアに行った。これでおしまい。』


私が小さくつぶやいた。
恭ちゃんは私を見ている。ずっとずっと見ている。
私も恭ちゃんを見つめた。







恭ちゃんの瞳が輝いた。
でもそれは涙のせいだった。







『わかった。』
と恭ちゃんも小さくつぶやいた。
『ずっと言えなくてごめんね。』
と私が小さく返した。




恭ちゃんは何も言わずただ私を抱き締めた。
それから私にキスをした。







恭ちゃんの車が向かった先は恭ちゃんの家だった。
何が始まるか分かっていた。
もう子供じゃなかった。








恭ちゃんと一つになるとゆう事は、晃を忘れるとゆう事。

恭ちゃんを受け入れるとゆう事は、晃との終わりを受け入れるとゆう事。










私は…









私は、恭ちゃんのベッドに座っていた。
物が少ない部屋。
電気をつけていない、暗い部屋。
恭ちゃんのベッドに座っていた。







『いい?』
と恭ちゃんが尋ねる。
『うん。』
と私が頷く。




暗い部屋。
物が少ない部屋。
恭ちゃんのベッドで、私は恭ちゃんを受け入れた。





私が選んだのは
『前進』



年が明けるちょっと前の寒い日だった。